BIG GroupとTOYOTAが2021年静岡県裾野市にてスタートする新たな共同プロジェクトが1月7日に発表され、世界中の建築-まちづくり-ランドスケープ等のあらゆる分野で話題となっている。火曜日のYOUTUBEのライブプレゼンテーションを観て正直ぶっ飛んだ。僕自身大学の学部生の頃BIG GroupのBjarke Ingelsのドキュメンタリーを観て、彼のデザインに衝撃を受けたのを今でも鮮明に覚えている。あまりの衝撃に当時英語がろくに出来ないにも関わらず彼の著書”Yes is more”に飛びついたのもその頃だ。
四年前僕が受けたBjarke Ingelsの衝撃は、デザインは勿論、むしろ彼の”ものづくりの考え方”にある。彼は当時コペンハーゲンの“Copenhill”のプロジェクトの真っ最中で、恐らく彼徐々に建築のデザインの幅をSocialなモノに拡張しようとしている段階であった。その時に彼はインタビューで「デザインをする際かけ離れた性格の要素同士を切り捨てたり、片方を分断するのは簡単で楽だ。しかしそれらを上手く1つのデザインとして再構築し上手く表現できた時、そのハイブリットは世を変えるパワーを持っている。」と語っていた。モダニズム(Less is more)のアンチテーゼであるポストモダニズム(Less is bore)ともまた一味違う、彼の強調する"Yes is more"の哲学が詰まった言葉だなと思う。結果そのデザインは嫌煙されがちなゴミ処理場をコペンハーゲンの新たなシンボルとして都市に組み込ませる事に成功した訳である。韻も固い。
今回の”The Woven City”のプレゼンテーションでもBjarke節が炸裂していたように思えた。印象的な彼の言葉を書き起こしてみる。多少意訳させてもらったが悪しからず…。 * It’s generally said that the age when technology, social media, and online retail is replacing and eliminating our natural meeting place. However “The Woven City” will explore ways to stimulate human interaction in the urban space. Through this innovation, human connectivity will become the connectivity that triggers well-being and happiness, productivity and the new way of our lifestyle in the future.
* 世間一般ではIT技術やソーシャルメディアは私たちの本来持っていた人としての関わり方を淘汰させてしまったと言われている。しかしそのマイナスイメージとは裏腹にThe Woven CityはAIやRobotics等の技術を導入を通じて、私たちの未来の都市生活における生活の幸せや利便性を提示する引き金となるだろう。 * "Today the typical is mess – with everything and nothing happening everywhere,"
* 今日世にあふれる一般的なスマートシティの在り様はめちゃくちゃだ。様々な事が実験的に行われてはいるものの、何か革新的な変化は実際に起きているだろうか? * We can preserve and evolve the old tradition through new technologies.
* 日本の伝統文化を新しいテクノロジーを通じて保存できる。はたまたもしかすると新たなエキサイティングな形へとアップグレードさせることも出来るかもしれない。
実に欧米人らしいデザインの考え方だなと思う。実際に僕が現在デザイン大学院で所属するstudioの実務経験豊富なアメリカ人の教授陣も分野は違えどBjarkeのように、不可能から逆算する「理想→現実」というダウングレード的アプローチよりも、「現実→理想」という様に発想のリミットを良い意味でどんどんぶっ壊していく事を重視していて、社会に有益な変化を起こし得るアイディアのダイナミックさを第一に要求してくる。恥ずかしながら僕はまだ実際に日本のプロフェッショナルの現場でデザインや計画づくりを経験していない身で言うのは身の程知らずも甚だしいとは自覚しつつも、このような「グラフィック任せで現実離れしてるよ」と言われかねないプロジェクトが日本で受け入れられてセンセーショナルに取り上げられてることに驚いた。裾野市の市長さんもかなり前向きにこのプロジェクトをアピールしていた。裾野市役所の技術担当の方や日本の建設コンサルタント会社はどうTOYOTAとBIG Groupとどう協働し案を構築していったのか本当に気になる。
このThe Woven Cityは一言でいうと「新技術の導入による既存の人類の都市生活の拡張実験」かなと思う。これは建築だけど、僕の分野であるLandscape Architectureでも失われ行く自然や、人類の都市生活と生態系の共存、気候変動や海面上昇等の将来起こる自然災害にデザインの力で対処していくという取り組みが2020年現在多く議論されている。その方法の一部として今まで使われて来なかった数々の最新技術が導入されてきていて、本来の自然を人工的に拡張させる"Cyborg Landscape"なんて言葉も生まれている。このAIやテクノロジーを人間の生活だけでなく生態系の保全や都市環境の改善に積極的に応用していく流れは今後Landscapeの分野でもどんどん加速していくんだろう。
アプローチ自体は正直オーソドックスなスマートシティの提案の域をそこまで出てない感は否めない気がする。WEEKLY OCHIAIで落合陽一さん(個人的にファン)もこのような構想をたまに述べているし、予期できる提案ではあったと感じる方も多いかもしれない。この流れを観るに、今後は俗にいう"良いデザイン"もしくは"社会的にインパクトのあるデザイン"というのはより複雑化していく傾向にあるのだろう。それらはMITのMedia LabにいるNeri Oxmanに定義されるように、「Science (for exploration)×Engineering(for invention)×Design(for communication)×Art(for expression)」の全てを制作のプロセスに高水準で取り入れ、最終成果物として如何にセンセーショナルに体現するかだろうなと個人的に感じている。James CornerもKate OrffもMichael Hargleavesも言われてみればみんなLandscape Architectureのフィールドでそれを行い評価を得ている。正直レベル高すぎて意味が分からないし吐きそうなのだが…。まぁ色んな意見があるので、そこはソーシャルメディアやうちのスタジオの教授達に色々意見を聴いて今後も理解を深めていけたら良いと思っている。僕自身先学期はホノルルの都市規模の社会実験プロジェクト構想をデザインスタジオで発表したばかりだった事もあり、天と地ほどのレベルの差に辟易しつつも、The Woven Cityの発表に込められたチャレンジ精神みたいなモノにとても共感した。良いか悪いかは別として、こういうエキサイティングなプロジェクトに自分の考えや制作スタイルをもっと連動させて好きなデザイン像みたいなものの解像度を高められたら良いんだが…。要はもっと勉強して理解の幅や日常生活に溢れる創造性のヒント達に気付ききれる感度を養えればと思う。そう思わされるプレゼンテーションだった。
※単純にBjarkeのデザインの日本語翻訳版みたいなのが見れてアガりましたね!あのWave模様の舗装素材がGravelっぽくなってたのを俺は見逃さなかったぞ。あれは恐らくデンマークのあれをあーしてこーして色々して日本庭園の石庭に翻訳している感じがしたし、建物の外観もLego houseやEight Houseの日本語版を見ているようだった。元から持ってるデザイン様式をどう日本風に昇華させるかっていう工夫や解釈の仕方が単にセクシーで好きだった。勉強。
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